人生ゲーム

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ノーベル賞の研究、PD-1って何? 〜がん治療の影で何が行われているのか〜

本庶佑先生、ノーベル賞ご受賞おめでとうございます!!!

 

なんか本当に嬉しいです。

 

医療費問題をはじめ泣きたいほど問題がある医療界ですから、こういう新規の治療法とかが評価されていると明るい気持ちになれますね。

 

ただ、僕は底辺医学生なのでPD-1とか全然分かりません。

知っていることは

 

ニボルマブって薬は免疫チェックポイント阻害薬って新しい薬で高い

 

ってことだけです、、、

 

そんなこんなで何がすごいのかなどなど調べてみました。

参考サイトはしっかりあげておきますので、間違いなどあれば指摘してくださる幸いです。(免責とか書いてもこういうの書くのクソ怖いです、、、)

 

新規の治療というのがいかにすごいものなのか、少しでも伝わると嬉しいです。

 

 

・受賞の理由

www.nobelprize.org

上にあるノーベル賞サイトに行くと、なぜ本庶先生がノーベル賞に値したかが詳しく書いてあるので、英語が得意な方はどうぞ!!

 

同じく受賞したAllison先生のことも書いてありますが、そこまで訳すのはしんどいので、本庶先生についての重要そうな記述だけ引用、翻訳していきます。

 

In parallel, Tasuku Honjo discovered a protein on immune cells and, after careful exploration of its function, eventually revealed that it also operates as a brake, but with a different mechanism of action. Therapies based on his discovery proved to be strikingly effective in the fight against cancer.

(簡単な要約)

免疫細胞にあるタンパク質(PD-1)を発見し、その機能が免疫システムへのブレーキであることを突き止めた。

(免疫は自分の体とは違うものを排除するシステム)

そして、PD-1に着目したがん治療が素晴らしく効果的だった。

 

画期的かつ効果的だったから受賞したんですね。

(Allison先生は既知のタンパク質の働きが免疫システムのブレーキであることを突き止めていました)

 

今までにもがん治療での受賞は多く、乳がんへのホルモン療法(Huggins, 1966)、化学療法(Elion and Hitchins, 1988)白血病への骨髄移植 (Thomas 1990)などがあります。

 

・がん免疫療法の歴史

19世紀終わりから20世紀の頭にかけて出てきたコンセプトで、

 

体内の免疫を活性化してがんを攻撃する

 

というどっかのエセ健康食品かなってところから始まったらしいです。

 

当初は患者を菌に感染させて免疫を活性化するなんてロックなことをやっていたらしいですが、流石に芳しい結果は得られずに研究が必要だってことになりました。

 

そこから多くの研究者が、免疫がどのようにして制御されているか、免疫ががんを見分ける仕組み、を熱心な基礎研究によって解明しました。

 

が、肝心の治療はあまり上手くいきませんでした。

PD-1が発見されるまでは!

 

・PD-1の歴史

PD-1は最初に書いた通り、免疫にブレーキをかけるタンパク質です。

ですが、そう簡単に発見された訳ではありません。

 

Ishida, Y., Agata, Y., Shibahara, K., & Honjo, T. (1992). Induced expression of PD-1, a novel member of the immunoglobulin gene superfamily, upon programmed cell death. EMBO J.11(11), 3887–3895.

 

1992年に発表されたこの論文から恐らく研究はスタートしています。

今から26年前って考えると気が遠くなりますね。

 

この時、PD-1はT細胞(免疫の司令塔)にあって、プログラム細胞死に関わっていそうなタンパク質でしかありませんでしたが、本庶先生はこのタンパク質についての研究を進めます。

 

Nishimura, H., Nose, M., Hiai, H., Minato, N., & Honjo, T. (1999). Development of Lupus-like Autoimmune Diseases by Disruption of the PD-1 gene encoding an ITIM motif-carrying immunoreceptor. Immunity11, 141–151.

 

その次の論文がこれです。

1999年、最初の論文から7年も経っています。

 

これはPD-1というタンパク質を人工的に作れなくしたマウスが、自己免疫性疾患の様な状態になったという発見から、PD-1が末梢の自己免疫寛容に関わり、免疫のブレーキとして機能しているのではないかと推測しています。

(自己免疫寛容は免疫が自分成分を攻撃しないようにすること)

 

Freeman, G.J., Long, A.J., Iwai, Y., Bourque, K., Chernova, T., Nishimura, H., Fitz, L.J., Malenkovich, N., Okazaki, T., Byrne, M.C., Horton, H.F., Fouser, L., Carter, L., Ling, V., Bowman, M.R., Carreno, B.M., Collins, M., Wood, C.R. & Honjo, T. (2000). Engagement of the PD-1 immunoinhibitory receptor by a novel B7 family member leads to negative regulation of lymphocyte activation. J Exp Med192(7), 1027–1034.

 

この2000年に出た論文では、PD-1の詳しい働きが述べられています。

 

Iwai, Y., Terawaki, S., & Honjo, T. (2005). PD-1 blockade inhibits hematogenous spread of poorly immunogenic tumor cells by enhanced recruitment of effector T cells. Int Immunol17(2), 133–144.

 

ノーベル賞のページで紹介されている論文はこれで最後です。

この論文はPD-1の働きを阻害することは、がんの転移に対する治療になり得ることを示しています。

 

•まとめ

一旦、ここまでで本庶先生のPD-1研究についての話を終えたいと思います。

 

1つのタンパク質を見つけ、詳細な機能を特定するまでにどれほどの資源がかけられているかは、僕には想像しかできません。

 

ここから、製薬についての研究が行われ、治験により安全性、効果を確認し、2014年にPD-1抗体はメラノーマの治療薬として世に出ました。

 

本庶研 PD-1

 

上のリンクにもありますが、免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は残念ながら魔法のように高いわけではありません。

 

なぜ効かない時があるかは研究の課題になっているようです。

 

最近、よくわからんアフィリエイターが病人を食い物にしていたらしいです。

 

新しい治療の裏側に、多くの俊英の努力と人生が積み上がっていることを知らないから騙されるし、騙すんです。

 

魔法の薬はありません。

ただ、それを作ろうと日夜研究を重ねている人がいることだけは覚えておかないといけないなと思いました。